緩と急が共存する街で一人暮らしを始めた

一年半ほど前、実家を出て下北沢に引っ越した。片道1時間半の通勤時間を短縮したくて家を出たので場所のこだわりは特になかった。会社から近距離通勤手当が出る5km圏内は新卒1年目の人間がある程度不自由なく過ごすにはどこも家賃が高く、小田急線であれば下北沢周辺、京王線であれば笹塚周辺のほぼ2択だった。もともと小田急線が好きで実家も小田急沿線にあったし、会社までも代々木上原乗り換えでほぼ1本のようなものなので、下北沢に住むことにしたのは当然の選択と言える。
閉鎖される前の南口。この後飲み終えて帰る人達がドッとやってきた
薄々分かっていたことだけれど、実際に住んでみるとその人の多さに驚く。南口から降りて代沢三差路方面への道沿いには飲み屋が立ち並んでいて夜は人でごった返している。北口は古着屋やお茶スポットが多く、特に土日はカップルや家族連れでショッピングやお茶を楽しむ人々が多い。元々人混みが嫌いなタチなので、この人の多さは数少ない誤算のひとつだった。とはいえ、自分が住んでいるのは繁華街から少し入った閑静な場所なので、普段生活している分には特に気になることもない。
至る所にコンビニはあるし、大抵の生活用品は南口のオオゼキかダイソーで購入できる。ごはんを作るのがだるくなったらオリジンダイニングや日高屋、適当なラーメン屋に入れば良い。最近は富士そばもできた。数分歩くだけで事足りる生活は、これまで住宅しかない土地に住んでいた自分にとって新鮮だった。もっとも、これが下北沢らしい生活かと言われると誰一人としてうなずかないと思う。僕だって首を横に振る。
北口。南口閉鎖に伴って現在は改札が1つ増えている
下北沢といえば何を思い浮かべるだろうか。劇場やライブハウス、古着屋が多く立ち並ぶサブカルの聖地というのが一般的なものだと思う。カレーの街だと思う人もいるかもしれない。自分にとっては延々と開発を続けている駅のイメージしかなかった。この一帯の複々線化事業は2004年から行われており、今年で丸14年を迎える。僕は今年の末で25になるところなので年齢の半分以上は工事をしていることになるし、下北沢は新宿に向かう際の通過駅程度の認識だったから、そう考えるのも無理はない。
実際、下北沢という街はここ1年半の間に大分顔を変えてきた実感がある。住み始めた当時、北口は現在の仮北口とは違い無印良品とみずほ銀行の間にあったし、戦後の闇市をタイムスリップさせてきたかのような下北沢駅前食品市場は既に全店舗が立ち退いて、建物一棟が取り壊しを待つのみとなった。つい数日前に仮南口が閉鎖され、小田急線から降りる口は仮北口と南西口だけになった。将来的には仮北口も廃止されて東口ができるらしい*1。開発は着々と進んでいる。
この日は最近下北沢に越してきた同僚と写真を撮って歩いた
一方で、まだ昭和の面影を残しているスポットもいくつかある。鈴なり横丁はその代表で、下北沢に住んでいるうちに一度は行ってみたいと常々思っている。オオゼキ裏の本多スタジオも、得も言われぬ古めかしさが独特のサブカル感を醸している。かと思えばインスタ映えを狙えるおしゃれなパンケーキ屋が点在していたり、井の頭線高架下の下北沢ケージとそれに併設のアジア風酒場で若者のDJ活動を見ることができたりと、現代のコンテキストに寄り添ったスポットも多く見られる。場所に寄って時間の流れが緩やかだったり、または急だったりと、表情をコロコロと変えるのがこの街の魅力だと思う。
鈴なり横丁。下北沢を代表するスポットのひとつ
なんだかんだで僕は下北沢という街を気に入っている。と思う。もうすぐ住み始めてから2年経って更新を迎えることになるが、引っ越すかどうかはまだ決めていない。この2年間忙しなく過ごしてしまったので下北沢を楽しみ尽くしている感覚は一切なく、このまま街を去るのはなんとも淋しい気がしている。一方で、身軽なうちにいろいろな場所を転々としたい気持ちもある。あと数ヶ月、このままとどまるかどうかをじっくり考えてみたいと思う。
京王井の頭線ホーム。小田急線と対照的に、時間の流れが緩やかに感じる
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